コメディ映画が大好きです。ライター歴25年中、10年近く映画ライターでしたから何百本見たかわからない。
毎回変わるので答えられません。
ただ、相手の年齢や性別、趣味趣向やらイデオロギーを問わず、「誰にでもおススメできるものは?」
と聞かれれば間違いなく『スクール・オブ・ロック』
元気が出ます。テンション上がります。ハッピーになれます。涙腺が緩くなったあなたなら、最後はきっとホロリとすることでしょう。
キャラ立ちした小学生がたくさん出てきますから、家族で見ても間違いない。それなりにハードな笑いなのに下ネタはゼロ。
逆に「子どもはちょっと・・・」というあなたにもこの映画に限ってはおススメできます。もしかすると、子ども好きじゃない方が賛同できるかもしれない。小学生を差し置いて「オレが主役!オレ、サイコー!」とばかり陶酔するジャック・ブラックが主人公なのですから。
20年近く前の作品とはいえ、2000年代以降というのは文化やファッションにあまり変化がありません。なので、今の映画とほぼ変わらない感覚で観れるのもおすすめポイント!
ジャック・ブラック主演『スクール・オブ・ロック』自己流あらすじ&脱線レビュー
教員免許もないダメ男が名門校の教師に!?
ジャック・ブラック演じるは、いい年してロックスター志望の無職男です。
コンテストで優勝を狙うはずがオレ様過ぎて自分のバンドをクビになり、友人宅に居候。しかも、カップルの家!友人の彼女には毛嫌いされ、『家賃払えないなら出て行って』と言われている。
でっぷり太った腹をさらして、ブラックはどこ吹く風。一言で言えば、自己チューのカス系キャラです。
そんな自己チュー男が、友人宛てに掛かってきた仕事の電話を偶然取る。
私立小学校の臨時教員ですね。週給を聞いて、とっさに友人のフリをする。そうして、小学生のクラス担任になると。
コメディですからいいのです。
彼には勉強なんか教える気はないわけですよ。
「成績はどうやってつけるんですか?」みたいなこと言う生徒には「成績なんかつけない!」とか言って、教室に貼ってあった星取表みたいなものをビリビリに破くと。
このシーンだけ見ると、生徒たちの自主性を願い、体制に抗うヤンキー先生の映画みたいですが、ジャック・ブラックの指導は「ずっーと休憩」。終業のチャイムが鳴ったら生徒とハイタッチして、われ先に帰っていくと。
小学生とバンド組んでプロを目指すって!?
そんな自己チュー男に変化が訪れるのは冒頭から20分弱。
音楽の授業で生徒たちの演奏を聞き、そのスキルにびっくりする。で、閃くわけです。何しろ、生粋のバンドマンですからね。
その通り。
この辺りから、観ていてウキウキが止まりません。
自己チュー男は子どもの扱いなんて知らんから、小学生も完全に大人扱いでムチャ振りをする(※これが功を奏す)。
ボーカルとリードギターは当然、このオレ様。キーボードやベース、リードじゃないギターやドラムに生徒を配し、オレ様下で特訓を始める。ロック史を教え、おススメCDを1人1人に手渡す。
ロックなんて聴いたことのない子どもたちだったのに「最強のギタリストはだれか?」で言い争うほどまでに成長する。子どもたちも個性豊かで配役の妙も味わえるし。
にもまして、圧巻は自己チュー男を演じるジャック・ブラック。
ゾーンに入るや一人ジュークボックス状態。周囲が無反応でも決して「我に返る」ことのない強心臓です。なおかつ、樽みたいな腹してるのにテンションMaxの一人漫談に息切れもせず。プロです、プロ。
「オレを~オレのバンドから~~~追い出すなぁあああーーー」とか「家賃♪伝説はあまりにハードコアーーー」とか。ヘンナ歌ですがやけに耳に残る。今も脳内で流れています。
ちなみに、ジャック・ブラックはテネイシャスDというバンドを組んでいます。誰も知らんだろと思っていたらば、Amazonで200レビューくらいあることに驚愕。
歌詞はやっぱりメチャクチャらしい。
登場人物は自信のない人たちばかり
そこはミソ。
「自分はモテないから、バンドなんかできません」という陰キャラ、「私なんかが歌ったら笑われる」というデブキャラ、「私は同僚に嫌われている」という校長先生(演じるはショーン・キューザック。ジョン・キューザックの姉です)。
極めつけはジャック・ブラック。「俺のオリジナルをやる」と偉そうに言ったくせに子どもたちに「じゃあ、歌って!」と言われると「いや、これはまだあまり。15分で作ったし。今の段階でアラがないとは言い難い」とかなんとかゴチャゴチャ言い訳を始めたり。
そこはもう、観客が期待する通りに。ダメ男が名門校の生徒や校長を成長させ、生徒たちはダメ男を成長させる。お決まりと言えばそうですが、そのお決まりを徹底的に見せるという懐の深さがある。
ラスト近く、主人公が生徒にある言葉を投げかけます。自己中のダメ男がそれまで絶対に言わなかったようなセリフです。決してポジティブなものではないけれど、これもまた成長。映画全体が引き締まる場面です。
脚本を書いたのは、劇中でも現実でもジャック・ブラックの同居人
リチャード・リンクレイターです。
本作のようなコメディから『ビフォア・サンライズ 恋人たちの距離』のような恋愛映画、実写をアニメ処理した『ウェイキング・ライフ』など実験的な映画まで作風の非常に広い監督です。
ビフォア・サンライズ 恋人までの距離(ディスタンス)(字幕版)
特に『ビフォア・サンライズ 恋人たちの距離』は今でも恋愛映画ランキングの上位に入るような作品。同じキャスト(イーサン・ホーク&ジュリー・デルピー)で続編、続々編があります。
もう一つ、『スクール・オブ・ロック』で大きいのは脚本です。
脚本家は俳優として本作に登場もしている。ジャック・ブラックの気の弱い同居人――彼女の尻に敷かれ、家賃を払ってくれないブラックにも逆らえない――を演じたマイク・ホワイトが書いたものです。
で、やはりというか、完全にジャック・ブラックをあて書きした模様。二人は友人で同居していた時期もあったらしい。
ちなみに、劇中の同居人彼女(サラ・シルヴァーマン)はマリサ・トメイに喋り方がそっくりです。その癖、マリサ・トメイのような「ギャーギャー言っても許せる愛らしさ」はなし。登場人物中、ほぼ唯一感情移入できないキャラでした。
どうせなら、マリサ・トメイにやってほしかったなぁ。予算の関係か。感情移入できないキャラを一人くらい作りたかったのか。勝手ながら、それが少し残念でした。
※マリサ・トメイがオスカーで助演女優賞取ったコメディ。こちらもかなりおススメです。
矢沢と浜崎、どちらがロックか、ジャック・ブラックに聞いてみると
『ジュマンジ』シリーズみたいな大作にも出てますが、私が好きだったのはグゥイネス・パルトロウと共演したラブコメディ『愛しのローズマリー』。
それまでチョイ役だったり、『ハイ・フィデリティ』のオタク青年の役とかやってたのに、グゥイネス・パルトロウの相手役とは!とびっくりした覚えがあります。『ホリディ』でもケイト・ウィンスレットと恋に落ちていますが(劇中ですよ)。
ジャック・ブラックに取材した編集者から聞いた話
最後にジャック・ブラック絡みのあまり知られていないだろうネタを。
『スクール・オブ・ロック』のプロモーションで来日した時、友人の編集者が彼を取材したわけです。
実物もそのまんまだったそうですが、この時、雑誌の企画で「どちらがロックと思うか?クエスチョン」をやってもらったと。
その通りです。彼はギター片手に歌いながらトライしたそうですよ、「こういうの大好き」ってね。
項目の中にはどういうわけか「ヤザワVSハマザキ」もありました。
矢沢永吉と当時絶頂期だった浜崎あゆみを意識したものかと。もちろん、ジャック・ブラックが二人を知っているわけもない。名前の語感からロックな方を選べ、というお題でした。
どちらに軍配が上がったか?
編集者「ホントに?本当にハマザキ?」
ジャック・ブラック「じゃあ、もう一度やってみるよ。♪ヤザワ~、♪ハマザキ~、♪ハマザキ~、♪ヤザワ~。うん。やっぱりハマザキだ。ハマザキの方がロックだよ」
※なお、『スクール・オブ・ロック』はU-NEXT新規登録でタダ見可能ですよ(2020年4月現在。配信状況はサイトで確認してね!)
コロナ期間中、31日間無料見放題(※一部作品除く)が嬉しくて、U-NEXTに登録しました。 少し前まで動画配信サービスはAmazonプライムで十分だと思っていたわけです。もとは映画ライターだった自分ですが、既に一生分の映画は見たからも[…]