自分が映画専門のライターだった頃、メグ・ライアンに取材したことがあります。
とはいえ、ショボすぎる自慢です。『プルーフ・オブ・ライフ』(2001)の映画祭用のコメント取り。タイトルには入れてみたけど、あれが取材と言えるのかどうか。いや、言えやしまい。
内容よりも、メグ・ライアンがラッセル・クロウと不倫した映画として有名になった『プルーフ・オブ・ライフ』。
実際に観たことある人少ないんじゃないかと思いますが、コロナ自粛で疲弊気味のあなたにこそ、おススメ!
武装組織に旦那が誘拐されるというキツイ話ながら、メグのライトな演技がその重さを割愛してくれます。
そのように聞こえるかもしれませんが、見直してみて私は十分楽しめました。
というわけで、今回は『プルーフ・オブ・ライフ』のレビューと、私同様ミーハーなあなたのためにメグ・ライアンに5分くらい会った話を少々。
『プルーフ・オブ・ライフ』の取材裏話
ゆうばりファンタ用にメグ・ライアンのコメント取り
引っ張るほどの話ではないので、メグ・ライアン取材の話を先にします。
ずいぶん前になりますが、ゆうばりファンタスティック映画祭で『プルーフ・オブ・ライフ』を上映しました。映画祭ですから監督や俳優が舞台挨拶することも多いのですが、メグが夕張に来るはずもない。
なので、映画のプロモーションで来日した際にコメント取りをお願いしました。
コメント取りというのは、なぁに、大したことはない。
みたいなやつ。
スタッフがあらかじめ、コメントを書いておいてメグに読み上げてもらうだけ。
何を今さら。
スターというもの、他人のコメントを自分のコメントのように読み上げてナンボのもの。
そもそも当たり障りのないことしか言ってないでしょう。とはいえ、紙を見ながら話すのはおかしいのでその場で覚える必要はある。
でも、覚えられないこともある。
そういう場合は、テキトーに本人がアドリブで話す。
以上。
メグ・ライアンと交わした「ハローグッバイ」
ところで、『プルーフ・オブ・ライフ』のプロモーションですが。
メグ・ライアンは自家用ジェットで日帰り東京でした。午前中に記者会見、午後は個別取材。夜には帰るみたいなスケジュール編成。観光はゼロです。
確か、新宿のパークハイアットだった気がします。今もそうなのかな。ハリウッドスターの取材は高い確率であそこだった。
パークハイアットの1フロアを貸し切って、それぞれの部屋でマスコミが待機してるわけですよ。
1101号室には映画雑誌のどこどこ、1102号室にはファッション誌のどこどこ、1110号室には情報番組のどこどことか、そのフロアーには宣伝担当者とマスコミ関係者しかいない、みたいな。
その通り。
各マスコミ媒体の持ち時間は10分から長くても20分くらいだったんじゃないでしょうか。今思うに、取材時間を振り分けて進行していく宣伝マンは大変だったでしょうね。胃が痛くなりそうです。
われわれのチームはすぐ終わりました。この時、覚えているのはコメントの紙を見たメグが「ユウバリのミナサン(日本語)」は言いにくいので「ドウモアリガト(日本語)」だけでもいい?と聞いてきたこと。
構いませんよ、となったのですが、メグは結局「ゆうばりの皆さん」も日本語で言った。リハーサルなんかなし、カメラ回していきなり本番コメント一発撮りです。で、5分足らずで彼女は去っていった。プロですね。
なお、この時、メグと私が交わした会話は以下。
私「ハロー!」
メグ「グッバイ!」
私「グッバイ!」
メグ・ライアンが飲み屋のママみたいで軽くショック
とはいえ、『恋人たちの予感』以来のファンだったわけです。
「メグ・ライアン」で検索すると、ずらっと並ぶのは「劣化」とか「整形のなれ果て」みたいな記事ばっかの今日この頃です。 だけど、私はめちゃくちゃナチュラル(それが整形の産物だったとしても)で、可愛らしかった時代をよく知っているわけです。こ[…]
あの可愛らしい人を間近に見ることができるなんて!同じ空間にいられるだなんて!みたいな興奮はあった。単純に嬉しかった。
ですがね。
本当のこと言うと、スクリーンの中の印象とはちょっと違いました。メグ・ライアン、可愛かったです。
でも、姉御肌みたいなタイプに見えました。
コメントの時、足組んでたし、場仕切りも上手で、ものすごーく誤解を招きそうなことを言えば、飲み屋のやり手ママみたいな感じ。
考えてみれば、ブレイクのきっかけになった『恋人たちの予感』しかり、トム・ハンクスと共演した『めぐり逢えたら』にしても『ユーガットメール』にしても、しっかり者というか、気の強い女性役だったし。
でも、姉御肌……とはちょっと違うしなぁ。隣の女の子みたいなキュートなイメージだったよなぁ。
だけど、実年齢はあの時、既に40歳くらいだったからなぁ。
松田聖子も未だにフリフリ衣装、似合うけど、喋ると飲み屋のやり手ママみたいになります。聖子ちゃんツアーの時に私は発見してしまった。
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つまり、海千山千超えてくるとそうなるのか? 自然な年の取り方なのかもしれません。
問題の『プルーフ・オブ・ライフ』は?自己流あらすじとネタバレ
この記事、ここで終えてもいいような気がしてきましたが、せっかく見直したので『プルーフ・オブ・ライフ』のレビュー書きます。
ホイットニーの『ボディガード』と被るキャッチコピー
人物関係を俳優名で整理した方が早いかな。
ラッセル・クロウ 人質事件専門の交渉人。
デビッド・モース メグ・ライアンの夫。武装組織に誘拐されてしまう。
まさにその通り。
公開当時のキャッチコピーは「男の使命、それは命をかけて守ること。ただし、決して恋に落ちないこと。」
既視感がありますね。
ホイットニー・ヒューストンとケビン・コスナーの『ボディガード』(1992)。面白いかつまらないかといえば、割とつまらない。だけれど大ヒットしました。
確か、この作品のコピーも「命をかけて守ること。決して恋に落ちないこと」だったような。大スターとボディガードのロマンス映画でね。
だけども『プルーフ・オブ・ライフ』でこのコピーはちょっとズルです。
なぜなら、ロマンスかサスペンスかといえば、明らかにシリアスなサスペンス映画だから。色っぽいシーンは全体の3%くらい。二人が惹かれ合っている気配も実はあまり感じられない。
そう、あなたのような下世話な観客に向けたコピーだと思うんですよ。
本作での共演をきっかけに「メグ・ライアンとラッセル・クロウが不倫」→「メグ・ライアン、デニス・クエイドと離婚」の既成事実ができたゆえ、こういう宣伝の仕方をしたのではないか。
薄汚くなるほど味が出るデビッド・モース(※メグの夫役)
実のところ、監督が描きたかったのはメグとラッセル・クロウの関係よりも、誘拐とか人質交渉のドラマであったと思います。それはもう完全に。
この作品の前後、『ビューティフル・マインド』でオスカーを受賞したラッセル・クロウもストイックな演技が良いです。
ですが、メグ・ライアンの夫役のデビッド・モースはさらにいい。
冒頭、洒落込んだスーツでメグと痴話げんかしていた頃は何も感じなかったのに、人質となり、小汚くなればなるほどに存在感は増していく。いい俳優です。
悪環境の中、足ざっくり切って血まみれになったり、スネに竹がぐっさり貫通したり、なのに歩けて破傷風にならない不思議はあるけれど、それは彼のせいじゃないし。
実は顔は見たことはあるものの、この人の名前には覚えがありませんでした。
が、ショーン・ペンが監督デビューした『インディアン・ランナー』(1994)の主人公だった。
こちらも骨太。当時、批評家に絶賛された本作、今はAmazonで★★★★★の嵐です。
人質交渉下、ラブコメディの女王然としたメグ・ライアン
えーとね。
可愛いですよ、とっても。
束感のあるクシャクシャとしたヘアスタイルを見るにつけ、「一生に一度くらいこんな髪形にしたいものだ」と思います。20年も前の髪形なのに。
夫を助けるためのミーティングに赴く時の、メグのカジュアル・コーディネートも可愛いです。
ブーツ率も高く、雑誌の「映画ファッション特集」に出てきそうな衣裳ばかり。
メグの瞳は相変わらずキラキラ、出るだけで画面がパッと華やぎます。
人質シーンは鈍い画面トーンなのに、彼女の周りだけ「テレビの国からキラキラ」です。
夫が誘拐されたと知った時も、犯人からの電話があった時も、交渉が決裂しそうな時も、そこにいるのはかわいそうな妻ではなくラブ・コメディの女王です。
映画のトーンを考えると、失敗だと思います。
でも、いち女性観客としては「なし」とはいえない。メグ・ライアンはめちゃくちゃ可愛いし、やっぱりスターです。
アンジーの『マイティ・ハート』と壮絶演技と比べるべくもないけど
メグではなく、ケイト・ブランシェットあたりがやればラッセル・クロウ(の役)との恋は結ばれないゆえの余韻が残ったのかもしれない。
「命をかけて守ること。ただし、決して恋に落ちないこと」通りの作品になり得たかもしれない。
あるいは、『マイティ・ハート』(07)のアンジェリーナ・ジョリーとかね。
これは実話で、アンジーもまた、テロ組織に夫を人質に取られた女性を演じています。
その気丈さが決壊する大号泣シーンとか見ていてたまらないわけですよ。演技とは思えない。この後にメグ・ライアンを見るとペラペラのぺっらぺっらですよ。
だけどね。『マイティ・ハート』のアンジーの壮絶演技をもう一度見たいとは思いません。
特に家では。特にコロナ自粛の今は。頼まれてもイヤ!です。
『プルーフ・オブ・ライフ』が公開された2001年当時、テロ組織に人質を取られるのは正直、遠い国の話でした。
けれど、今のわれわれはISが起こした悲惨な事件の記憶もある。外国人が人質に取られるような映画はテーマだけでもものすごく苦しいわけです。
夫が誘拐されたのにラブ・コメディの女王然というのは最悪のように思えます。
だけど、家で観る、特にコロナ自粛で疲弊している時には、メグのこのライトな演技こそ「最良なのでは?」と思ったりもするわけです。
「ハロー」と「グッバイ」だけとはいえ、言葉を交わした相手にひどいこと言うよなとは思いますが、そうはいってもメグ・ライアンは自分にとって青春の光なわけです。
青春の光が出演するサスペンスドラマは傑作とは言いませんが、それなりに面白い。
ただ、もう一つだけツッコミをさせてください。
夫の誘拐をメグに知らせる近隣女性の服がヘンです。
「悪い知らせなのよ」と切迫した顔で言うくせに、着ている服はテントウムシのアップリケだらけのシャツ。
なんで?なんで?なんで普通のシャツにしなかったのでしょう。
なんで、こんなふざけたシャツを着せたのでしょうか???
※本記事は2020年4月のものです。動画配信状況はU-NEXTやAmazonで直接ご確認ください。
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